条件適合理論にそった洞察と試行錯誤
現在、組織を日々率いている後藤さん。これまでのマネジメント経験も豊富で、過去の勤務先でもさまざまなマネジメントの旅を経験されていらっしゃるそうです。そのご経験から、自ら大学院で組織(組織行動論)についても体系的に学ばれ、実務と学術の両方から組織の視点を深められてきたそうです。そんな後藤さんに、「ぜひ、組織成長とマネジメントの話を伺わせてください」と私からご依頼し、今回の対話が実現しました。
「僕は、条件適合理論:シチュエーショナルリーダーシップをすごく重視していて、この人はもう手取り足取り教える。この人は、もうある程度放置するーというのを、4段階に分けて設定するっていうのをやっていました」冒頭、弊社の組織成長のロードマップを見ると、そうお話しくださいました。状況や条件に応じて、対応を変えていくことで、状況を改善していくことや、習熟度に応じ、ご自身のマネジメントを変えて、相手と接してきたということです。冒頭から、後藤さんのマネジメントへの姿勢やストイックさに、引き込まれた瞬間です。組織のマネジメントと一口に言っても、マネージャーが全員同じではありません。その人や組織に、今必要なことは何か? という視点を持ち合わせなければ、組織のマネジメントを正しく遂行することが難しい。分かっていても、クリアな軸と言語化されたノウハウをお持ちの方とお話しすることは、稀有な機会とも言えます。
組織が混乱期に乗じたとしても、信頼関係のラインを担保していく
「これも、特定の状況下において、事例としてうまくいったということではあるのですが...」そのように前置きし、組織の雰囲気が悪く、離職や休職などが頻発するような時期・混乱期の乗り越え方を、ご自身の前職の経験をもとに、お話しくださいました。「混乱期に乗じると、組織の雰囲気が荒れてしまうことはあります。それでも、たとえば、誕生会をやったりとかチームのコミュニケーションをよくすることを目的とした施策を諦めることはしませんでした。たとえば、すぐ横のチームとは軋轢があって、雰囲気が悪いことがあるかもしれません。それでも、直属の上司とは強い縦の信頼関係を構築して、隣とは関係悪いけど、この部長と仕事できる状況をどうやって作っていくか? ということも考えました。その本人の成果は、会社の評価としてはそんなにでも、本人と部長が握っている成果として出ているみたいな状況を作ることは意識してきました」これこそが、まさに条件適合なのかもしれませんが、その組織では、組織全体を温かい家庭的な雰囲気を作ることで、メンバーが安心して働ける職場環境づくりを心掛けられたそうです。その時の状況下では、前述のような対応が功を奏されたとのことで、メンバーのキャラクターに応じ、マネージメントをうまく適合できたという事例としてご紹介くださいました。
混乱期のマネジメントが抱える、コミュニケーションコストとの葛藤や試行錯誤
混乱期におけるマネジメントにはコミュニケーションコストとの葛藤が存在することも説明されました。後藤さん自身も、マネージメントコストをどこまでかけるべきか常に考え、よりドライな組織の方がコミュニケーションコストも低くて良いのではないかと考えたこともありました。具体的にどこまで許容できるのか、どこから許容できないのか、どの状況で線引きすべきかを経験に基づいて考えられたとのことです。さらに、コンフリクト(対立)や衝突が起きた際に、マネジメントとして対応した結果上手くいかなかった場合、軌道修正すべく迅速にPDCAサイクルを回す必要性を述べられました。「修行」という言葉も用いられていましたが、状況を見て改善が必要な行動であると自覚され、試行錯誤を重ねてられたのが、現在の後藤さんのマネジメントスタイルへの礎なのでしょう。
形成期ほど、「話す」から始める。そして前向きに自分を「疑う」ことも忘れない
「形成期ほど、若手のマネジメントはチームづくりをする時、【話す】に重きをおくイメージだと思うんです」形成期のマネジメントの特徴として、後藤さんから飛び出した言葉です。「多分、会話というものに対して信頼感をおいている状態です。言葉に頼ってしまう。ただ、基本的に人は本音を言わないなんていうのも、本当はあったりしますよね。それでも、若手のマネジメントは、言葉を交わせば、その人の本音が見えるのではないか? と信じてしまうし、信じたい。特に若手マネジメントは、『話す』の行動から手をつけているように見受けられますね。そして、もちろん、話すのも大事です。しかし、話すだけではないですよ」話すだけではないーそう言った後藤さんが、次に若手マネジメントが心掛ける動詞を教えてくれました。その動詞とは、【疑う】でした。よく部下の方に使うたとえ話と一緒に、その真意をお聞きしました。「私と仕事、どっちが大事なのって言われたときには、AかBかを聞かれているんじゃないんですよ。この質問の真意って、『私は寂しいんでもっと構ってほしい』ってことを言っているに過ぎない。だから、白黒つけた答えを持って行動すると、あらぬ方向にいってしまう。マネジメントも同じですよ。聞かれたことや言われたことを、そのまま真に受けるのではなくて、今、聞かれていることや言われていることを、いい意味で『疑う』のって必要だと思うんです。これはどういうことだろう? なぜ、そんな風な問いかけなんだろうって、疑う。深掘りすることで、本当の真意に近づけます」額面通りに受け取るだけではなく、いくつかの側面を見てみようーそんな意識づけとも取れるお話でした。そして、チームを作る時期だからこそ、「もっとよくできる何かが隠れているのでは?」という視点で「疑う」ことで、その先にくる混乱期をも乗り越えていける基盤ができるとも言えます。
自分の個性をもとに、マネジメントを考えてみる
これまで、非常に論理的で言語化が巧みな後藤さんに、ご自身が、マネジメントで注意している動詞も伺いました。組織を作り上げていく形成期に必要な動詞は? と伺うと、【見る】をあげてくださいました。「見ると言っても、感情を見るーそんな目で捉えぬくイメージです。しっかり見て、記録していくと再現性が高まったりとか、次のPDCA回しやすいんですよね」後藤さんの言う「見る」は、感情の色をどのようにつかむか?でもあります。 たとえば、朝礼をするときのそのチームの空気感、みんなが帰るときの空気感や、ランチのときに軽く雑談してる空気感をも含んでいます。ご自身で見たことは、「何月何日に、こんな状況があった。これはもしかしたら何かの兆候かもしれない」といった、メモを元に、今はこういうステージじゃないか? と仮説立てて、PDCAを回されるのです。ご自身でも、体の感覚として「見る」のが得意と仰る後藤さんならではの対応です。皆さんは、どうでしょうか?マネジメントの方それぞれの個性や強みによって、状況を捉える感覚は、使い分けが必要なのかもしれません。
試行錯誤を繰り返しながら、目指す成長
最後に後藤さんは、組織は形成期と混乱期を繰り返しながら成長していくと指摘されています。経験から、混乱期を抜ける頃に人員が入れ替わり、新たな形成期が始まることも多い。それぞれの状況や習熟度に応じた対応は、経験を通じて磨かれていくものであり、組織の次のステージに向けて、「話す」「疑う」「見る」を継続しながら進んでいく必要があると締めくくってくださったのが印象的です。
多くのマネジメントの方にとって今後の指針となるヒントが詰まったお話を惜しみなくお話しくださった後藤さん。皆様の、マネジメントの旅のコンパスとなりますように。
【取材協力】
デジタルプロモーション株式会社 代表取締役 後藤様
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