【取材記事vol.10】「悟る」「聴く」「受けとる」「切り替える」「変える」

【取材記事vol.10】「悟る」「聴く」「受けとる」「切り替える」「変える」

孤立を体験したからこそ、1つでもできることを

今回は、さまざまなお客様や組織と向き合われてきた安東さん。現在は、人材系のお仕事もされているそうですが、マネジメントの原体験に立ち戻って、組織づくりについてお話を伺いました。

四面楚歌の中、人がついてこない状況の深刻さを【悟る】

サービスの複合施設を展開する企業に18年ほど勤められていた安東さん。そこで、最初にマネジメントに着任された20代の強烈な経験が、ご自身のキャリアの原点だと話されます。

「複合施設を展開する企業だったので、常に多くの人々が集まる環境で仕事をしてきました。自社の従業員だけでなく、業務委託の方々も関与しており、さまざまな契約形態のメンバーが協力して業務に従事していました。多様なメンバーとともに働く環境でのマネジメント経験から、多くの気づきを得ました」 それまでもマネジメントはしてきた安東さんでしたが、初めて10人ほどのチームを任された時に、風向きは大きく変わったそうです。 「チームのメンバーの8割は、私よりも年上で経験も豊富な女性。しかし、自分が最も若くて、かつ営業として一番の成績を上げていました。私は売上の数字を伸ばすだけでなく、チームのマネージャーでもありました。ところが、チーム全体の非難の的となり孤立してしまって。チームは崩壊寸前で、当時勤務していた施設の総支配人(GM)と私は、ある日、本社の経営層から、厳しい指摘を受けました。ただ、最初は指摘された点がいまいち理解しきれなくて。自分では、なぜ数字を伸ばしているのにこんなことを言われるのだろう、程度に思っていました」 人が自分についてこない、という感覚はどこか心の奥にあったそうです。そして、経営層が夜通し安東さんに指導が数日続いたことで、ようやく事態を重く捉えられたと話されます。 人が自分についてこない現実や、経営陣からの真摯な警告に気づいたことで、安東さんはメンバーとの面談を開始することにしました。

まずは、話をじっくり【聴く】ことに徹して得た、一体感と成果

実際に、メンバー、1名ずつと膝を突き合わせた面談を開始します。 「終わりの時間を決めずに、膝を突き合わせて、しっかり『聴く』っていうことをとにかくやりました。長い人だと、1名、3〜4時間かかりました」 振り返っても、その面談の時間はタフだったと話されます。 面談を通して、メンバーの半分が既に退職を検討している状況が詳らかになりました。 しかし、面談を実施したことで、少しずつですが一体感が出てきたと感じる瞬間が生まれ始めたそうです。その後、安東さんのチームは過去最高の成約率や売上を上げなど、結果が伴い始めます。

話す、聴くこと自体ももちろん重要ですが、安東さんは話す場についても心掛けたことがいくつかあったと教えてくださいました。 「チームを作る過程のアプローチはさまざまですが、最も重要なのは、コントロールではなく、一人ひとりとの対話です。相手の都合はわからないこともありますが、面談の日は少なくとも、私は他の予定を入れないようにし、しっかりと心を傾けて聴く姿勢を大切にしました。所定の時間を決めてしまうと、面談がうまく進まないことが多かったからです」 安東さんは、このようなスタイルをサーヴァントと表現されましたが、まさに、相手に仕えていくリーダーの心を体現されていますね。

マネージャーも怖いし辛い。相手からのフィードバックを【受けとる】

メンバーと終わりの時間を決めずに面談をしていく中で、必ずマネージャーはメンバーからフィードバックを受け取ることになります。特に、当時の安東さんは四面楚歌の真っ只中。年齢的にも若かったこともあり、メンバーからのフィードバックを受けることは、辛さを伴うものだったと話されます。 「当初はマネージャーって、なんか指示出したらみんなが動くっていう イメージでした。それが面談をすると、フィードバックされます。 自分のパフォーマンスに自信を持っていたので、自己評価とは異なる視点を指摘される内容を受け取るのは辛かったですね」 今は、フィードバックを受け取れること自体がありがたいのにね、とちゃめっけたっぷりに話されますが、当時はその経験が少なからず負担を感じたのだそうです。 既に、チームの形成期から混乱期を乗り越える経験をされた、若かりし頃の安東さん。その強烈な体験から、混乱期でギスギスしたチームとの向き合い方について、お話ししてくださいました。

【切り替える】なぜなら、今、この瞬間に何ができるかを考えるから

「チームが、課題と向き合いギスギスすることは仕方がないことです。 正しさや間違いなど、色々考えるのですが、結局は、ポジティブに思考を切り替えて、今日、今、この瞬間から何ができるかだけを考えるようになりました」 本来あるべき姿や王道、正しいとされるものが数多く存在する中で、このような結論に至ったと話される安東さん。世の中の既存の基準に囚われ過ぎていないか? と聞かれた気がして、心の奥から考えさせられる瞬間でした。

「もちろん、時には緊張や摩擦が生まれることもありますし、誰かがこうすべきだと考えることもあるでしょう。しかし、それが重要なのか、ということに疑問を感じることもあります。 だからこそ、今の状況に焦点を当てること。今、何が最善の選択か。その時に直接話したほうがいいと思えば、直感に従って話をします」 誰かを変えることは難しい。しかし、時間は有限でもある。だからこそ、自分にできることを少しでも、1つでも実行しようという気持ちで動かれるそうです。 組織では、時として「あるべき姿」や「正しさ」にとらわれて立ち止まってしまい、結果として不毛なやりとりを続けてしまうこともあります。このような対応の積み重ねが、緊張感を増幅させていることもあります。 1つでも、小さな課題を解決する眼差しと行動力、ぜひ、心がけたいですね。

流れを【変える】大人になる

正しさや正解よりも、どんなことでも良いからできることに目をむけることは、自らにとっても健全な行動だと話されるAさん。 今回、ご自身がとても好きな「大人とは、流れを変えられる人」という考え方を教えてくださいました。 流れを変えることは容易ではありません。技術でも、場でも、流れをガラッと変えられるのは、ある種の大人にしかできないことであり、大人であることの証なのかもしれません。そして、流れを変えるとは、目の前の状況を しっかり見て、動いた人のみ得られる成果でもあります。 「今までがどうかよりも、その瞬間に多くの流れを変えられるような人でありたいなって思っています」 私たちは、今、目の前のことと向き合い、1つでも相手のことを知ろうとしているでしょうか。 そして、1つでも、自分ができることを行なっているでしょうか。

マネジメントで苦しい時、潮目を変えたいと思う時ほど、実際にできることに向き合うこと、できているでしょうか。逃げ出したくなる気持ちもあるでしょうし、厳しい状況もあるでしょう。それでも、少なくとも1つでも、今できることを見つけて取り組むことの大切さを、数多く教えていただきました。

【取材協力】
株式会社シーオーメディカル
安東尚徳
https://coholdings.jp/

《この記事に関するお問い合わせ》
ラボラティック株式会社 広報担当

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