【取材記事vol.12】「染み込む」「言い続ける」「言い換える」「飛び越えない」

【取材記事vol.12】「染み込む」「言い続ける」「言い換える」「飛び越えない」

今回の取材は、多くの事業や店舗の立ち上げをご経験され、現在は企業の代表として、大きな事業を構築されている、猪腰さんにお話を伺いました。猪腰さんが繰り返し経験されたことで体得した、マネジメントノウハウを凝縮してお届けします。

【染み込む】まで何度もやり続けたからこその重み

旅行業界での組織立ち上げを何度もされてきた猪腰さんにとって、ご自身の中での組織の立ち上げは、すでに運用までを見通した段階にまで進化している印象でした。「契約を結び、人材を募集し、認知活動を行うなど、体制を作っていく。事業モデルが完全に整った状態まで立ち上げました」サラリとお話しくださいましたが、ゼロから何かを立ち上げるという経験を何度もされること自体が貴重ではないでしょうか。何度もこのプロセスを経たことで、シンプルにプロセスが見え、無駄がない言葉が紡がれるのです。一方、このようにお話しくださるほどに、猪腰さんには多くのノウハウがご自身に染み込んだ状態でした。

長い時間をかけ、試行錯誤の結果、ここまでの知見が蓄積された状態で、その後、全く新しい事業の立ち上げを経験されることになったそうです。「以前の旅行業のノウハウを完全に活かし、導入しました。今の通信事業も実質的に同じです。商品を作り、サービスを提供できるよう整える。そして最終的にはお客様の意思決定を待つ。これにつきます」

ビジネスモデルや戦略といった言葉はよく使われますが、本質的なことは業種関係なく普遍的であることに猪腰さんの言葉から気付かされました。私たちは、目の前のビジネスと組織の立ち上げを、体と心に染み込むほどのノウハウで向き合い、取り組めているでしょうか。

1つのことを、一年中ずっと【言い続ける】【言い換える】

立ち上げから軌道に乗せていくマネジメントのご経験を重ねられてきた猪腰さんですが、大事にされていることも伺いました。「大きい方針などに関しては、1つのことをずっと言う、です。基本的には、自分の伝えたいことは、伝わらないので。それに、個人差もあります。だからこそ、本当に伝えたいことは、ひたすら、一年中ずっと言い続けることです」

さて、その1つのことを言い続けるときの「1つ」とは何なのか? そのポイントについても伺いました。「本当に大事にしたいこと。たとえば、顧客本位にやるっていうことを伝えたいとします。そうすると、顧客本位を言い続けるのではなくて、顧客本位とはなんぞや、みたいな点を具体的に伝えます。基本的には断らないことだ、XXXという伝え方はNGだ、とか。たとえば、感動のサービスっていうのが伝えたいことだったとしましょう。分かることを当たり前にやってるなら、いいサービス。感動のサービスは、お客様が気づいていないことをやって差し上げるからこそだ、といったように伝えます」

こういったことを、日々、言っていますよと笑顔でお話しくださる猪腰さんですが、伝え方の妙が潜んでいます。決めた言葉を、行動レベルに落とし込み、細かく手を変え、品を変えて言い換えている。言い続けている内容は、伝えたいことの本質と紐づく行動であり、その本質の行動をバリエーションを持って伝えていらっしゃるようです。皆さん、日々のマネジメント業務で、言い換えて伝えられるほどの言語化は進んでいるでしょうか。

チームを作るなら【飛び越えない】ほうがいい

目から鱗の連続の猪腰さんからのお話ですが、チームを作る上で気をつけている点も伺ったところ、指示系統をしっかりと築くことがいかに重要かをお話しいただきました。

「たとえば、私の配下に管理職の部下がいるにも関わらず、その指示系統を飛び越えて、直接、上長の私がチームメンバーなどのマネジメントをした瞬間に、配下の部下は、メンバーに対する上司としての権限が全て失われてしまうんです。結果的に、できることもできなくなったり、部下が勝手に信用しなくなったりします。だから、私が部下を飛び越えてマネジメントすることは、結果的には部下の能力を低く評価してしまうことになります」

飛び越えたマネジメントは避けつつ、猪腰さんは、直下の部下との対話を欠かしません。「管理職、特に中間管理職は、上司にも部下にも説明責任がある立場です。説明はしていても、自分の考えや理由が明確でなければ、私は厳しく注意することがあります。なぜ行うのか、その言葉と行動に責任を持つことで、行動が連動し、他の人にも伝わります。そうでないと、周りに見透かされてしまいますから」

猪腰さんの根幹には、「なぜ?」という問いがあるようです。その「なぜ?」に自身でも答え、相手にも同様の問いかけとその答えを行動に移すよう投げかけているのでしょう。もし猪腰さんが部下を飛び越えて直接指導してしまうと、部下は振り返る機会を持たず、成長の機会が失われてしまうかもしれません。「本当は私もいい加減な人間なんです。だからこそ、問い続け行動することは楽じゃないです。でも、自分がこうやって飛び越えず、向き合って伝えないと、お互いに成長しないと思うので」ご自身も、常に組織と向き合い、成長の糧とされているのですね。

猪腰さんの、経験で練り上げられたマネジメントの眼差しは、ご自身にも相手にも問う姿が印象的でした。また、同じ根幹を、様々な伝え方で日々伝え続けるといった工夫も見えました。我慢したり、言い続けたりと、どちらも忍耐を要する行動ですが、いずれも続けられるのは、それによって成果が出るという見立てがあるからこそ。

まだまだ、猪腰さんのように見立てて動ける領域にはいないとしても、私たちマネジメントが心に留めておくべき本質が詰まった、何度も読み返して振り返りたいお話しでした。

【取材協力】
HIS Mobile株式会社
猪腰 英知様
https://his-mobile.com/summary

《この記事に関するお問い合わせ》
ラボラティック株式会社 広報担当

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