「こんなことはあってはならない」「経営陣の関与は全くない」「当事者が勘違いして実施したこと(単独)」「目標設定はしたが、ノルマを設けたわけではない」「役職者の認識違いのために不正が起きた」 とある不正が繰り返し行われており、社員から告発があった企業の社長の会見での言葉です。
このような不正が常態化してしまった組織について、少し思いを巡らせ、自らも振り返ってみました(あくまで私見・メモです)
不正が起きた企業の報告書には、再発防止について、以下のような内容が記載されていました。
原因 特別調査委員会の原因分析により、当該問題の原因として以下の事項の指摘を受けました。 ①不合理な目標値設定 ②コーポレートガバナンスの機能不全とコンプライアンス意識の鈍麻 内部統制体制の不備適正手続きを無視した降格処分の頻発コンプライアンス意識の鈍麻 ③経営陣に盲従し、忖度する歪な企業風土 ④現場の声を拾い上げようとする意識の欠如 ⑤人材の育成不足
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再発防止策(一部抜粋) 特別調査委員会からの提言を受けて、当社として以下の再発防止策を策定しました。 ①適正な営業目標の設定 従来の実績100%の評価基準を改め、経営理念である「常にお客様のニーズに合ったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する」を体現すべく質を重視した目標を設定します。業績評価、給与体系についても、工程管理、品質の項目を重視した内容へ見直しを行います。 ②リスクマネジメントを実行的に行うための内部統制体制の整備 取締役会機能を十全化すべく、毎月1回、全役員参加の取締役会を開きます。コーポレートガバナンス改善のために社外取締役を迎え入れます。内部統制体制を改善するため、作業や業務の監査を行うテクニカルサポート部員を増員して不正行為の防止・早期発見を行います。社内システムを改修して不正ができない環境を構築します。懲戒処分の運用の適正のために、賞罰委員会の実施、及び外部専門家の参加を行います。コンプライアンス担当取締役を任命し、かつ取締役会直轄のコンプライアンス委員会を設置します。外部専門家による経営陣に対するコンプライアンス研修を実施します。 ③企業風土改革 経営陣は「不条理な上命下服を強いる」と指摘を受けた企業風土を深く反省するとともに、現場との対話の機会を創出して、企業理念や適正な営業目標の理解や得心を通じて、顧客第一の企業風土の醸成に努めます。 ④現場の声を拾い上げる仕組みの構築 現場と経営陣の円滑なコミュニケーションを促進するための現場巡回の際の個別面談を実施します。社内ホットラインを開設するとともに、外部通報窓口の設置を含めた内部通報制度の改善を行います。 ⑤従業員教育の強化 フロント業務、現場業務それぞれの優秀者または外部指導員による定期的なフロント、板金、塗装の全スタッフのスキルアップ研修を実施します。この度判明した不適切行為の内容やその発生原因を活用した、実効的なコンプライアンス教育を実施します。
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経営者やマネジメントの「対話不足」が招くことー「閉ざす」
社長の会見時のコメントと、以下から考えさせられる点は多くありました。
経営陣は「不条理な上命下服を強いる」と指摘を受けた企業風土を深く反省するとともに、現場との対話の機会を創出して、企業理念や適正な営業目標の理解や得心を通じて、顧客第一の企業風土の醸成に努めます。
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社長の会見でも、以下のように話していたのが印象的です。「目標設定はしたが、ノルマを設けたわけではない」「役職者の認識違いのために不正が起きた」
組織のコミュニケーションは、「意図を持って相手に伝える」ことと、「相手から伝わったことをフィードバックする」ことで成立します。「不条理な上命下服を強いる」と指摘を受けた企業風土という表現は、言い換えると、「上長の言ったことが全て。フィードバックは成立しない」という状態とも言えます。
「それってこういうことですか?」といった、問いも対話も生まれない。仮に、言われたことを聞き返そうものなら「それ以外に何があるんだ」「言ったことが全てだ」と言われた挙句、話が通じないという印象を上長に植え付けてします。結果、評価も下がる可能性を予測した結果、誰も何も言わない。
さて、私が今回、自ら振り返り社長の考えや想いは、組織内に正しく伝わり、健全な対話を生んでいるだろうか。という問いを投げかけました。
*「言ったことが全て」と主張し、質問を受け付けていない、または受け付けてもらえない態度は取っていないか(一方通行)
*相手に伝えて、相手がとの相違がないことを確認しているか(双方向)
対話は双方向のやり取りです。知らぬ存ぜぬという前に、相手に、何かしらの問いかけはできます。さらに、相手に伝わるように、分かりやすく伝えていたか。相手の話を引き出すことをしていた。
相手に伝わらないという「もどかしさ」は、組織のどこでも起きます。私自身も、相手に伝わらない、伝えきれないもどかしさが数多く味わっています。どうして、そう捉えるの? と思うこともあります。それでも、グッと力を入れて、伝わるように話せているか。私の当然は、相手の当然ではないかもしれない。そういう前提を持ち得ているか。誰かに責任を転嫁できないのが、社長だと私は思っています。だからこそ、「伝え続ける」ことは諦めないでおこうーそう思いました。
【正す】よりも、【黙す】ことが横行する。
言われたことを実施することが全て。このような世界では、正すことは起きにくい。なぜなら、言われたことに反する「正す」という行為を行えば、行った本人が不利益を被ります。
「正す」ーこの行為は、とてもエネルギーを使います。この行為をするくらいなら、黙して語らない方が楽なのかもしれない。ひとたび、組織や個人が黙すサイクルに入ってしまうと…その先に待つものは、取り返しのつかない不健全な波乱や混乱です。
今、チームが、マネジメントに対して黙していることはないか。私自身、自社の組織に対して、そういう疑念を持っています。社長の私が怖いから、私が聞かないから、私に言っても無駄だから…と黙されていることはないか。伝えるのは面倒だから…とやらない、言わないメンバーはいないか。
常に問うことはあるか。
ー私たちは、組織を通して、社会で何を実現したいのかー常に、この問いと向き合い続け、答えを出すことの重要性を改めて考える機会となりました。
弊社は、組織で働いて、幸せになる人を増やしたい。そのためにも、「閉ざす」ことよりは「開く」。「黙す」ことよりは「正す」を、自ら、組織に課していく。改めて、色々と考えさせられました。人の振りを見て、自分の振りを直し、自らを問いただす機会を持つことは可能です。自らが見聞きしたことは、私への警告でもあるのではないか。 個人的にはそう思って受け止め、背筋を伸ばし、襟をただす。
忘れそうになったら、改めて問うことにします。「私たちは、社会で何を実現したいのか」まだまだ道半ばですが、問い続け、真摯に1つずつ実現していきたいものです。 (記:ラボラティック株式会社:野口麗奈)