「心理的安全性」について、米国ペンシルベニア大学ウォートン校の組織心理学者、Adam Grant博士のLinkedInポスト
「Things people aren’t afraid to say when they have psychological safety (心理的安全性のある人だけが言えること:弊社訳)」
こちらを切り口に、日々のチームコミュニケーションでお使いいただけるTipsを、弊社COO野口より数回にわたってご紹介しています。
是非、コーヒーブレイクのお供としてお楽しみください!
心理的安全性がないので、チームでこれ言えません Vol.2「間違えました」「ミスしてしまった」
皆さんは、ちょっとしたミスや、自分が明らかに間違った対応したりしたら、チームメンバーの前で認めて報告できますか?報告がテンプレになってる会社もあるかもですね。
とはいえ、前回(心理的安全性がないので、チームでこれ言えません 〜Vol.1「分かりません」〜)に引き続き、自分のミスを認めることも、ましてやそれをメンバーに伝えることも、とても勇気が必要ではないでしょうか。
心理的安全性の提唱者であるエイミー・C・エドモンドソン博士は、「心理的安全性」をこんなデータから発見したーこのお話で、少し勇気が湧いたら嬉しいです。
エドモンドソン博士は、病院のチームの業績とエラーの計測によって、心理的安全性の種を発見します。なぜなら、業績が高いチームほど、エラーの報告数が多い点に着目したからです。
元来博士が有していた前提は、「エラーが少ないチームほど業績が良い」でした。しかし、データによって、その前提が覆る結果となったことを契機に、その理由を解明したのが、心理的安全性です。
博士は、心理的に安全なチームではエラーが絶えず報告・改善され、結果的にチームの学習が促進されるため、業績が向上することを実証しています。(Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative science quarterly, 44(2), 350-383.)
つまり「間違えました」「ミスしました」と共有することは、チームの学習の源泉とも言えます。
それはそうだけど、そう言うは容易く、行うのは難しい。
さて、「間違えました」「ミスしました」ーこれらの言葉を引き出すのは、どんなチームであっても、絶対的にリーダーの役目だと私は考えています。
早大の村瀬准教授が「リーダーはチームのルー。シチューになるかカレーになるかはリーダー次第」と仰っていたのですが、まさに、リーダーのチーム作りによって、エラーが隠蔽されるか、オープンになるか、そして学習が始まるかー。
では、「間違えました」「ミスしました」を引き出すために、リーダーはどんなことをしていけば良いのでしょう。以下は、私が経営学の理論やキャリアコンサルの手法などを有しながら、実務の中で使っているノウハウを交えた私見です。そう、あくまで私見ですから、皆さんの経験や知見から、ぜひ学びたいなという気持ちで記事を書いています。
【メンバーからのエラーを引き出す】
前提として、リーダーからチームへ以下を啓蒙する。
・オープンなコミュニケーションが基本だと発信し続ける
・エラーは学習の源泉。1つ組織が改善・前進するのだから、臆せずみんなに
言うことと何度も言う(これは、私が特に経営学の博士課程にいて、
理屈っぽいから言えるのかも。言われたメンバーは、始まったよ・・と
思っているやもしれません 笑)
とはいえ、この辺りは、どの組織でもされているかもしれません。
でも、これだけでは、エラーの報告は上がりません。なぜなら、実際にエラーがでた時の、チームやリーダーの対応をメンバーは見ているからです。
【メンバーはエラー発生時のリーダーの様子をつぶさに見ている】
エラーが出た時に以下のような状況が1回でも起きると、まず引き出すのは難しい。
・リーダーが報告者を執拗に責める
・メンバー同士で非難する
・メンバーがエラーを知らぬフリをする
・自分ごととして受け止めない
さらに、リーダー自身の振る舞いも見られている、と私は考えています。
リーダー自身もミスや間違いは起きます。その時、以下のような言葉や態度が出ていませんか?
・XXXがダメだったから・・と他人や外的な要因にして、自分のミスだと
認めない
・「本当に申し訳ない」と口では言うけれど、心では「なんで自分ばかり」
と思っている
・「申し訳ない」ばかり言うが、なぜエラーが出たか特定しない
・何度も同じミスやエラーを引き起こす
・「人はミスをする」と開き直り、改めない
思い当たる節が少しでもあれば、エラー報告の道は閉じたままです。
【エラー対応のステップ】
私は、自身の失敗も含め、リーダーは、エラーを次のステップで伝えるのが鉄則だと考えています。
- 自分のエラーが何か特定し、明示する
- 謝罪する
- 何がよくなかったかを全体に伝える
- 改善を回す上で、支援が欲しい点を、素直に伝える
- 実際の改善策を策定し、自ら回す
ここまでで、エラーの対応はワンセットです。エドモンドソン博士の学習と業績の関係性から考えても、報告は起点であり、終点ではありません。
正直、私も上記を意識して運営していますが、ミスを認め、申し訳なかったと伝え、改善や支援を依頼し、改善策を自分が率先して学習を回すのは、気持ち的にしんどいこともあります。
過去のチーム運営では、自分のエラーは正当化して、チームから総スカンにあったこともあります。痛い経験から学んだのは、自分からしんどくても率先して行動していると、周りはよく見て、自然と動き出すということです。
そして、メンバーからのエラーが上がってきたら、以下で対応します。
- 言いにくいことを報告してくれた点を感謝する
- 自分含め、発生しうるエラーであり、チームとして改善しよう、と伝える
(ここで、どんな状況で起きたのか? どこを改善すると良さそうか?
などの問いかけを挟むと、報告者との目線の擦り合わせにもなり、学習が
始まります) - エラーの収束はチームごととして対応し、必要に応じてリーダーを含めて
メンバーをアサインする - 具体的な改善案の検討をチーム全体で実施し、今後の施策を決定・実践
する(前段で、状況等をきちんと把握し合うからこそ、全体への周知と
方針も明確にうちだせる)
【当たり前ほど難しい】
さて、これらの話、当たり前でしょうか。
書くと、教科書的ですが、実際にやるのは至難の技です。でも、少しでも意識して運営を続けると、格段にチームは成長します。
もちろん、課題やエラーの緊急度が高いものであれば、既に学習済みの解を先に渡して、迅速に処理することを最優先にします。大事なのはうやむやにせず、上記のプロセスをきちんと回し続けることだーというのが、現時点の私の結論でした。
少しでも、チーム全員で前進できるよう、日々取り組んでいますが、皆さんは、どんな取り組みをされていますか。ぜひ聞かせて頂きたいです。