今回は、ご自身でも多くの部門や組織を束ねる経験を経て、今は上場企業、大手企業グループの戦略子会社、スタートアップなどの並走者・顧問として幅広い企業形態の組織開発に携わっておられる河上さん。「人への温かさ」と「俯瞰的、客観的に組織を見つめる冷静さ」の両面の眼差しで、河上さんから「組織作りのベースとなる世代間のコミュニケーション」についてお話をお伺いしました。
【分かりあう】のはことばの表面的な意味ではなく、価値観
様々な形態の企業に並走する中で、河上さんは「企業によって微妙な違いはあるけれども、組織運営について共通して言えるのは、ここ数年、ジェネレーションギャップをいかに克服するかに、経営陣やマネジメント層が苦戦している点」と話されます。
「ジェネレーションギャップを、いかに分かりあっていくか。これは、価値観を分かりあうことともいえそうですね」 河上さんは、どんな企業や年齢の幅であっても、そのギャップの要因は仕事の価値観ではないか、とも話されていました。 そして、この価値観の差は、組織に大きな影響を与えているのです。 「ギャップが解消しないままだと、この会社にいる意義が見いだせずに、離職に繋がったり。また、スタッフから信頼を得ることができずに、マネージャーが精神面で休職に追いやられたりと、価値観の違いを分かりあえてないことで起きてしまう。残念なことです」 河上さんはのお話には、悔しさも滲みました。そして、間近で苦悩しているマネージャーの姿を見ている若い世代は、マネージャーになりたくないという考えを抱いていく。組織が停滞しやすい要因が大きくなるばかりです。
伝えるだけではなく、【伝わる】までが大切
世代などを超えて、互いの価値観を分かりあうことが、なぜここまで難しくなっているのでしょうか。 「なんとかして想いを伝える意識と、伝わることまでできているかは別なんですよね」 ドキッとする言葉ですが、皆さんはどうでしょうか。自分が伝えたと思っていることは、伝わっていないかもしれない。 伝えたつもりになっていないか? 河上さんは、その様子をこう話されました。 「上の世代は、若い人たちを何とかして育てたい、若い人たちのキャリアを応援したいと考えているけれど、なかなかその熱意が若いメンバーに伝わっていないこともありそうです」 1 on 1をするなどして、なんとか互いのことを理解し合おうと努めていても、本当に伝えたかった熱意や価値観が伝わっていないかもしれない。河上さんは、そんな風に考察されているそうです。
ギャップがあるのは当たり前。だから【埋める】ことを恐れない
価値観という切り口が出てきたので、昨今の若手の世代の価値観についても、河上さんに伺ってみました。 「決して、給与や役職やキャリアアップだけに執着している訳ではない若い世代。だからこそ、会社のビジョン、ミッション、バリューといったことも、社長の代弁者として中間管理職が伝えていくことが求められていると感じます」 自分はこの会社で何を成し遂げるのか、どんな人たちと混じり合うことができ、成長できるのか。様々な想いを持って会社に身を置く若い世代が、日頃から接するのは中間管理職なのです。ところが、20代中盤から30代前半で初めてマネージャーになった人たちは、マクロな話や長期的なビジョンのような話をチームメンバーにすると、偉そうに見えたり、おこがましいと感じてしまうことも。結果的に、足元の数字の話や目の前の話に終始してしまうことも多いと、河上さんは言います。もちろん、未来を伝え慣れていないし、トレーニングも受けていないのですから、自信を持てないーそう感じるのも当然です。勇気も必要ですし、伝える前に自分が萎縮してしまうのですね。 「中間管理職のこの姿勢が、若い世代の失望を招き、離職の一因となってしまったりもしてしまうから、悩ましいですね」と残念そうにお話しされる河上さん。
それでは、実際、このような状況をいかに乗り越えていけば良いのでしょうか? 「世代間のギャップを互いに埋めるような動き方をやってみたらいいのかなと、ここ最近思っています。部門間のギャップを埋めることには積極的でも、世代の認識を埋める対応には、実はあまり光が当たらない。2週間に1回とかで、互いの世代間の意識を埋める動きも必要そうです」 根底は、一方的に理解しようとするのではなく、お互いを理解しあう動き方であると同時に、埋めるのは「部署間(業務的な認識)」なのか「世代間(価値観)」なのか。視点の転換こそが、まさに必要とされているのかもしれません。世代を超えて理解するためには、もどかしさ、恥ずかしいと言った気持ちをを伴うこともあります。そういう気持ちを互いに持ちながら、向き合い、乗り越えてみてはどうか? なんだか、河上さんからのエールのように響きます。
心を開いて、【擦り合わせる】【繋がる】ことができるか
「これまでのコミュニケーションで良いのかを振り返ったり、改善の重要性が増しているのではないでしょうか」
言い換えると、互いの違いや課題点などを、フラットに擦り合わせていくことに、私たちは意識を向けているでしょうか。 河上さんは、目標管理ミーティングのような、ともすると上から目線で少し形式的なコミュニケーションだけではない、もう少し深い、そしてフラットな目線での、互いのあり方を分かりうあうことに目を向けて、このように問いかけてくださいました。 相手と自分との間で、どのように分かりあえるか。相手と擦り合わせながら、どのように互いが繋がっていけるか。互いについて敬意を払い、高めていけるか。お互いを擦り合わせていくことは、互いの価値観を分かりあうことにも繋がる。恐れずに、一歩を踏み出せたら素敵ですね。
「相互理解(互いを分かりあう)」という言葉を使いながら、私たちは「若い世代を理解しようとしない上の世代が、諸々改めるべき」という世間の風潮に流されすぎてはいないか?という問いかけにハッとした、貴重な取材となりました。そして、河上さんがおっしゃったように「組織の成長のために、一番大事なことは、本当の意味での相互理解だ」という想いを再認識させていただく時間となりました。
【取材協力】
現職:株式会社JY LINK 代表取締役/企業顧問・アドバイザー
河上 純二様
https://jylink.jp/
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ラボラティック株式会社 広報担当
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