人材の流動化という文脈で語られることの多い人材市場ですが、今回、取材させていただいた泉澤さんは、その潮流のもとで、人材紹介の事業を展開されている若い経営者であるとともに、自社での人材の定着のために社員との良好な関係を維持するという精神を併せ持って、天性のバランス感覚で組織運営にあたっておられます。
社長自ら【楽しむ】、社員と楽しみを【分かち合う】
取材の最初に泉澤さんから出たのは「社長自身がやっていることを透明化させる」という言葉でした。 そして、その意図についても説明していただきました。 創業期には、顧客との会食などを盛んに行っていたといいます。すると、事情を理解していない社員の方からは「働いていない/会食三昧の社長」という印象を与えてしまい、あることをきっかけにご自身の社内での見られ方などについて振り返られたそうです。 そこで、もっと素直に「仕事を『楽しむ』社長」を見せることこそが仲間に対する姿だという思いに至ります。以来、社員には自身の齟齬のない姿や考えをしっかりと伝え、社員の信頼を得て、会社全体の業績を向上させることに注力されています。
そうおっしゃる泉澤さんの組織管理の一番大事なポイントは「社員とは、仲間として、付き合う」ということ。「仲間がいないといい仕事もできないはず」ともおっしゃいますが、それだけ、社員との関係性を重視されているのが伝わります。 泉澤さんが、「鬼のように仕事をして、終わったらみんなで鬼のように遊ぶ」とお話しされるように、仲間と仕事の楽しみを「分かち合い」、成果の喜びを「分かち合う」ことを会社のカルチャーに置かれているのが印象的です。
さらに、メンバーと分かち合うという取り組みには「月1回の全社総会」と「毎朝の朝会」を挙げてくださいました。全社総会では全事業部の事業進捗発表の後、組織に対する社長としてのご自身の想いや事業構想などを発表されるそうです。一方、朝会はトーンが違い、社員の3分間スピーチとそれに対する質疑応答が中心だそうです。 この二つの会議は、社員の仕事への取り組みに対して「メリハリをきかせ、なあなあ感を防ぐ」という効果があると言います。 「ついでに」と泉澤さんが付け加えられたのは「全社総会が終わった後は、ビールを飲みながらの締め会です」。仲間である、その想いを会社全体で分かち合っているからこそのアクティビティであり、お言葉ですね。
目標は【伝える】、道筋は【任せる】、有望な人材は【口説く】
もうひとつ、泉澤さんが大切にされていることがあります。それは、権限委譲です。 特に幹部メンバーに対しては「遠いマイルストーンを『伝え』、そのあとは、どんどん仕事を『任せて』いき、そこに対して足りないことがあれば任せられた人が工夫して乗り越えるスタイル」だそうです。 ただ、それができる、任せたいと思える人材を採用するのが泉澤さんの真骨頂です。「知人などの紹介や仕事上で接点があった優秀でカルチャーの合いそうな人材を口説いて入社に導く」「この人だ、と自分が響かない人には声をかけない」という方式での採用について、「こうと決めた人材を口説くための時間と努力は惜しまない」という姿勢は、経験で培った「しつこさ」だというのがご本人自身の評価です。果たして、多くの経営者が優秀な人材を欲する中、ここまでの想いを込めて、相手にぶつかっていく人はどのくらいいらっしゃるでしょうか。自分は、相手が折れるまで何ヶ月も口説き続けますよと、笑ってお話しされる泉澤さんですが、そこにご本人の信念と情熱を垣間見させていただきました。
現場感覚の実行役を【演じる】
泉澤さんは「僕は、フロント営業と広告塔役」と、ご自分を定義されています。そして「頭脳役はナンバー2、ナンバー3に任せている」ともおっしゃっています。 たしかに、その言葉通り、トップ営業を行っておられますし、メディアへの露出を多くするように心掛けられてもいます。 ご本人は、それを「面白い社長じゃないとダメだから」と理由づけておられます。もしかすると「フロント営業と広告塔」は、ご自身に対する定義の本質ではなく、今の組織で必要な役割を『演じる』ことに注力されているとも言えそうです。面白い社長を「演じる」ことで、社員の帰属意識を高めるのが、組織にとって必要だと感じ取った結果なのかもしれません。 だからこそ、ふと「人材の適正配置を含めた組織開発の能力をもっと身につけて、組織をよりよく運営できるようになりたい」など、心から組織を大切に育てていこうとする経営的な目線でもお話しくださいました。「演じる」役割とは違い、経営者の本質的な部分も見据えているから。これこそが、泉澤さんの経営のバランス感覚なのだと、お話の随所から感じ取ることができます。
泉澤さんは起業家社長。起業家ならではのカリスマ性はもちろんですが、組織としての成長を目指すからこそ、ナンバー2、ナンバー3の方々と、「意思決定チームとしての体制」が構築され、事業の方向性や戦略を議論し決定されています。 「自分の身近で口説いた仲間が、こうしたい、ああしたいと話してくれる。たとえば、XXX億規模の企業にしたいとか。叶えるために何をしていくかを考える。すると、会社はギアが入るし、成長もします」 そう笑顔で話されていた姿に、社長の大きな器や、仲間たちとの強い絆が見えました。
100人企業になることを見つめ、そのために【備える】
「現在は、社員50人規模の会社だけれども、スピード感をもって会社を成長させたい」と、次のマイルストーンである「社員100人企業」を見つめておられる泉澤さんと、取材の最後に、情報交換をさせていただきました。
「100人企業になるために、今から、何を、どう『備える』か?」がそのテーマです。
泉澤さんは、自らが考えておられるポイントを「今の組織は、まだ混乱期にいると感じている。そのために、社員一人ひとりとのコミュニケーションをベースにして、成長期に向かおうとしている。でも、成長期に入り、社員が増えた時点で、社長としては、時間的に、このコミュニケーションスタイルを続けたくても続けられなくなる。その解決策は、自分と同じマインドを持つ幹部層の人材を増やし、その人たちが自分の分身となってくれること。そして、その人たちにどんどん権限委譲していくことだと考えている」と表現されました。 確かに、成長軌道に乗り始めた会社において「社長の意思が伝わりにくい」「社長の権限が強すぎて、社員の自主性が育たない」というリスクが現実化してしまう会社も多く、そのことをお伝えすると「早々に、自分と会社の棚卸から始めないとね」と前向きにおっしゃっていました。
泉澤さんのバランス感覚は「天賦の才」かもしれませんが、起業までの道のりの中で培われた考え方やセンスも重要な位置を占めているのでしょう。今ある会社の姿は、起業後の組織の形成期、混乱期の中で、組織の未来、経営層メンバーとの意思決定、そして社員の幸せに、真摯に、向き合っておられたからこその成果。今後の事業成長を心から応援させていただくとともに、そのお話からは見習う点も数多くあり、深い学びの機会となりました。 今回の取材では、その重要な考え方、センスの部分、そして成果の源をお聞きすることができました。取材を通して、若く志も高い経営者の想いを、多くの方にもお伝えしながら、改めて、私たちも真摯に事業や組織に楽しみながら向き合うことの大切さを確認する機会となりました。
【取材協力】
株式会社デザイナー 代表取締役
泉澤 恵一朗様
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