小さな組織の時に、組織の核を作り上げる
現在の会社の立ち上げからの軌跡と共に歩まれている、Iさん。 前職では、リーマンショックなどを契機にした経営方針の大転換を経験され、社員の離脱も経験されました。会社の立ち上げ期に、数名の社員と必死に会社を盛り立てた経験や、お客様に自社のビジョンを伝えた時の、お客様が響いてくれた時の喜びなど、まさに組織のエッセンスが詰まったお話を伺うことができました。
草創期:互いに【信じる】ー信頼関係の上に共感を得た時の喜び
Iさんは、現社を代表と共に立ち上げた、まさに立役者のお一人でした。 前職の方針転換を受け、前職時代の仲間と、当時はまだ市場が安定していなかったウェブの世界のコンサルティング企業を立ち上げます。更地から家を建てるような、会社の創業期の頃をこんな風に振り返ってくださいました。 「創業した時って、正直ブランドも何もないから、まずは実績作りを始めました。本当にありがたかったのが、前職のお客様がそのまま一部ついてきてくださったんです。まず、いただいた仕事で実績を残すことを、最初の2年ぐらい続けました。代表は新規開拓、私は既存のお客様対応と役割を分け、実績づくりに邁進していました」 立ち上げてすぐの企業でしたが、自社のビジョンをお話しされた時のお客様の反応が、草創期の組織を助けてくれたとIさんは振り返ってくださいました。 「弊社のビジョンを当時のお客様に話したときに、結構、刺さるんだなって思いました。立ち上げて間もない会社のビジョンを説明したとて、取り合ってくれるだろうか…そんな風に思っていたのです。しかし、実際は、これまでの信頼関係もあったからだと思いますが、ちゃんとビジョンっていうところに共感していただいて、お願いしますって言っていただけました」 当時は、10名程度の社員でプロジェクトに没頭する日々を送っていたIさん。少数精鋭のメンバーで、ビジョンを伝えながらお客様との信頼関係も築き、事業は順調に滑り出していきます。その当時を振り返り、「ビジョンが拠り所になる」という強烈な体験を得られたともお話しくださいました。 しかし、会社規模が大きくなるにつれて、前職中心だったメンバー構成から、全く新しいメンバーが入社を始め、会社は新たな局面を迎えていきました。
「噛み合わない」を乗り越える処方箋は、仕事で互いに【分かりあう】ことかもしれない
会社が順調に実績を伸ばし、お客様との信頼を勝ち得ながら成長していくと、新しいメンバーも自社に参画してくれるようになります。慣れ親しんだ古参のメンバーと、新規参画のメンバーの間には、当然ながらカルチャーの違いが生まれていくのです。 「何と表現したら良いのか・・カルチャーの違いとでもいうか。要は、同じ会社の中でも、前職時代から在籍していたグループと、新しいグループの皆で、その仕事のやり方とか価値観とかが違う。そこで、ちょっとギクシャクっていうか、うまくかみ合わなかった時期がありました」 Iさんは、「噛み合わない」と表現される状況への処方箋として、「仕事を通じた仲間意識」について教えてくださいました。 「やっぱり、なんだかんだ、その仕事を通じて、相互理解を生むというか。仕事があって、それがやりがいのある仕事であれば、やっていく中で仲間意識が芽生え、人間関係が調整されていく。今思えば、良かったのは、こんな初期の時期であっても、チャレンジングなコンペを勝ち抜いたり、金額も大きく期間も長い、やりがいのある仕事をさせてもらっていた。こういったやりがいのある仕事を通して、相互に調整をかけていたんだと思います」 組織として、噛み合わない状況を受け入れた上で、グッと成長するような仕事と共に向き合うことで、みんなで乗り越えていく。 言い換えると、仕事を共通言語にしてチームを作り上げていかれたのです。 前職の仲間でしっかりと会社の基盤を築き、新しいメンバーとも、挑戦を通じて仕事でチームを築き上げていく、プロフェッショナル集団を率いてきたIさん。しかし、会社が5年目を迎えた頃には、大混乱も経験されました。「僕らの場合は、どちらかというと前職時代の仲間がある程度来て始めた会社だから、混乱期が訪れるタイミングが多分、普通の企業よりも遅めに来たのかもしれません」 そんな前置きと共に、組織特有の成長痛とも言える混乱期に直面されます。
混乱期は、会社と「合う」か「合わない」かだけが問題とは言えません。 混乱期に突入した自社には、2つの「合うのか」という問いが潜んでいるようでした。1つは、企業規模に対して難易度が高い大規模案件を受けること。案件規模が実際の企業規模と体力に見合わない状態になったことから、組織の混乱や疲弊が起きたというのです。もう1つは、中間管理職に「合う」かどうか。企業規模が大きくなったことで、自社内に中間管理職を作っていくことが必要となりました。いわゆる、プレーヤーとして優秀な人材をマネージャーにすることで生じる課題や問題に直面したのだそうです。 しかし、大企業でない限り、潤沢な人材プールがあるわけではありません。起点を「合う」かに置きながらも、事業の歩みを「合わない」理由で止めることはできません。 「その当時は、3歩進んで2歩下がるでしたね」 Iさんが、当時を振り返って、まさに一進一退を繰り返していたとお話しくださいました。 しかし、この状況で中間管理職を設置し、見えてきたこともあったといいます。 「経営陣とマネジメントの間で、理解や思考にギャップがあるのは当然だと思うんです。土台や経験も違うのだから、それは当然。しかし、30人を超えてきた組織の経営には必然的に担保すべき売上がある。すると、土台となる組織づくりが後手に回ってしまい、皺寄せがあると思っています」 このように話された後、組織の土台づくりを早い時期に実施していく必要性についてもお聞かせくださいました。
経営者とメンバーの視点を【揃える】ことの重要性
土台作りの1つとして、経営者とメンバーの理解の差を「揃える」ことも重要だとお話しされるIさん。 「経営者の目線と社員の目線が違うのは、見てるものとか情報の違いとも言えます。違うものを見ているから、経営側の考えが伝わりにくいところもあります。同じ高さで情報がないのに、わかったよっていうのは難しいこともあります。開示せずしてマインドを変えろって言っても、虫がいいというか」 もちろん、どこまで情報を開示するのか? という点には、多くの見解があるのも当然です。この話の本質は、経営層とメンバーの目線を、互いに理解し合うために「揃える」ことの重要性を示しているとも言えそうです。経営層側である程度、開示の程度は考えながらも、メンバーの視点を少しだけ経営と揃えることの重要性について、Iさんは続けます。 「全て伝えなくても、例えば、こうなったら赤字になるんだよ、と伝えるのって大事ですよね。後戻りは本当に大変で、大型の客船が1キロ先の氷山をよけるために、相当手前から舵を切っているのと同じです」 揃える程度と、組織への影響度は、特に経営層の組織作りへの姿勢や思想が出る点かもしれません。 今後も、何を、どの程度揃えるのか? という点は、多くのマネジメントの方々にとって意識していく点でしょう。
ちょっと【気になる】にアンテナを巡らすー興味関心度の10段階で1〜3に反応しているか?
さて、多くの示唆深いお話をIさんに、現在、Iさんご自身がプライベートでも意識していらっしゃることを最後に伺いました。 「興味関心度が低いものにあえて反応するのを意識しています。たとえば、興味関心度のスケールが10段階あったとすると、大体7以上のものに反応してしまう。ただ、僕は今、1から3のものに反応するようにしてます。ちょっとだけ気になった、というものに反応している。そうすると、たとえば出会いや人とか機会とか、出会いとかの気づきが、実は多かったりしています。自分の勝手に積み上がってきた固定観念の外から、自分に気づきを与えています」 分かっていても、つい自分の興味が高かったり、得意に感じる方に行きがちなのは、実はマネジメントも同じかもしれない点です。そして、違う観点が入ることで、自分への気づきが深まったり、新しい見方を得ることにつながります。 「結局、回り回って、異業種の考え方がプラスになったりします。 今は、毎週新しいことをインプットするようにしています」
これらのアンテナがあることで、自分と相手の相乗効果も高まる。自分が触れる何かとの繋がりが、更にIさんの視点や組織運営に広がりや豊かさをもたらしていくことでしょう。
【取材協力】
業界:Webコンサルティング・Web制作業
現職:共同創業者・取締役CRO兼CTO
イニシャル:I様
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