【取材記事vol.6】「揃える」「受け止める」「支える」「打ち返す」

【取材記事vol.6】「揃える」「受け止める」「支える」「打ち返す」

スタートアップの事業拡大による成長痛との向き合い方

時間や事業軸にズレと向き合い【揃える】 個人レベルでもっと上に、もっと事業をドライブしていく中で、かならず起きるさまざまなズレ。Hさんは、事業フェーズが進むにつれて、時間、事業、個人のスタンスにズレが起きること、そして、そのズレと向き合う大切さについてお話しくださいました。 「時間軸で物事を考えていかないと、抽象的かつ近視眼的になりがち。それゆえ解像度が低く、ふわっとした印象になりますよね」 時間の目線がズレると、双方間のコミュニケーションが上手くいかない。しかし、事業成長を描くためには、もっと中長期的な視点も必要になる。 まさに、時間軸の綱引きで、共通認識を醸成するのが必要とも言えます。 さらに、事業軸ではこんなズレも指摘されます。 「事業の拡大に伴い、サービスなども広がります。おのずと人も増えていきます。事業や人の繋がり等の大事な部分を理解しないままに、さまざまな話題が上がり、複雑にズレる。時間軸も事業内容も、話者のイメージがズレた状態で会話している。そんな中、新しいメンバーが入ってくると…」 時間も事業に関するトピックもズレていく。2つのズレがある時点で、既に形成期と混乱期を一緒に迎えるような状態かもしれません。このようなズレが、事業の今後の成長スピードを落としてしまうことは、容易に思い浮かびます。これらの状況で何が重要かという点について、Hさん自身の経験をもとに対処法をお話しいただきました。

「時間軸と事業のポートフォリオをマッピングして話す。どの事業のタスクをどこの時間軸イメージで話しているのか、という認識を『揃える』必要があります。特に共通認識を持つべく、ある職位以上では、特定の指標をすり合わせることを意識しています。新規メンバーが参画した時にも、こういった認識があるだけで大きく違います」 まずは、今、自分がどこの、何の話をしているのか。同じ地図を見ながら、現在地を把握できていることが重要です。その上で、決裁や意思決定をするという目的でのクローズな会議はできる限り減らし、どこで何が決まっているかを見える化することに注力されています。まさに、スピード感を持って意識を揃えるために、何をしていくのか、というエッセンスが詰まっているのではないでしょうか。

個人のスタンスのズレを【受け止める】 刻一刻と変化し、事業成長を目指して動くスタートアップであれば、入社時期でキャリアや会社に求める内容が変わることも起きます。それは、メンバーにとっては、自分がやりたかったことと、会社の方向性にズレを感じるということ。 「弊社も、最初はものづくりの、実際に作るところがメインでした。そこから成長するために、クラウドサービスに重点領域を移してきた経緯があります。そうなると、ものづくり主体者から、ものづくりのサポートをする立場に変化してきたことで、ズレが生じました」 このような事業の変化の中で、各個人が会社に求めるキャリアや職務などのズレは、丁寧に受け止め、対応を進められたそうです。メンバーとの面談次第では、異動できる環境を整える、副業を解禁する、フルフレックス制度に全社的に取り組むなど。まさに、働き方と自分が求めるキャリアのバランスが取れるように対応を進め、熱量のあるメンバーの灯火を消さないように尽力してきたのです。

組織レベルで【支える】 「組織と事業の成長を推進していけば、必ずスピードに耐えきれずに体制面がほころびます」 このような体制面のほころびは、他に影響を与えてしまい、事業推進観点で遅延も起きやすい状況に。遅延を防ぐための策は、組織レベルで支えることで回避していくしかないのでは、との見解をいただきました。 体制の問題なのか、個人の工数の偏りなのか。 細かく分解し、課題によって体制を変えるのか。 個人スキルや希望と向き合い、受け止めてきた点をもとに、対応措置を講じています。社内で吸収できないリソースであれば、外部を活用し、回避したい課題をあらゆる観点から是正するために、支えとなる施策を打っているそうです。 この、「支える」根幹にあるものを、Hさんはこう表現されます。 「変化することが前提のスタートアップでは、要所要所で人と人で向き合う姿勢がとても重要である一方で、情緒的な部分だけでは不十分です。企業の規模が大きくなるのと比例して、組織体としての合議とか意思決定基準の重要性も高まりますから」 最初は、気合やガッツで乗り越えられていても、規模が拡大すれば、自ずとズレが生じる。ズレは、気持ちだけでは乗り越えにくく、体制、運用、数値管理といった仕組みや制度の重要性を改めて実感させられます。ただし、根幹には、人と向き合って、組織と人を「支える」ために、必要な仕組みを考えていること。人が中心の運営あってこそですね。

自分で考え、行動する。まずは高速キャッチアップと 、自分を周りに知ってもらうために【打ち返す】 日々進化する現場で、Hさんが、今の組織に参画された当初、どんなことを実践されていたのか、改めて伺いました。 「入社後早々、周囲に対して「○○の責任者です」と立場を明確にしながら、自身の認知度を高めていきました。。なので、その分キャッチアップスピードも極限まで高めて、自分に回ってきたものは、的確に打ち返し続けました。 入社当初は、メンバーからも、Hさんは何ができる人なのか。などと聞かれたこともあったそうです。何を期待できて、何を相談したりできるのかなどを、よりクリアにして欲しいといった要望も出てきたのだとか。 「既存のメンバーは、人の入れかわりを多く見てきました。失礼がないように、相手をリスペクトしつつ、きちんとやり切る姿勢を見せることが、とても重要だと思っています。その行動を続けていると、メンバーが助けてくれたり、教えてくれたり…」 このようなやり取りから、行動で示していくのが一番と考え、高速キャッチアップと的確な打ち返しを続けた結果、後々、Hさんの部下になって支えてくれるメンバーも現れました。参画当初から、お互いの信頼関係を、仕事への姿勢と行動で確かめ合ってきたのかもしれません。

成長を確実にするために、最速で何をしていくのか?  成長を確実にするために、最速で何をしていくのか? 成長を確実にするために、形成期をどう過ごすのか? 高速キャッチアップと的確な打ち返しを行い、相手とラリーをすることで、理解を深め合うのも、1つの形成期の手法ではないでしょうか。 また、今、自分たちを時間軸と事業軸で理解し合い、揃えていくことの重要性についても、改めて痛感させられるお話でした。 これらのお話の基本には、個人と向き合い、受け止め、仕組みで支えていく姿がありました。 Hさんのお話からは、組織の成長痛を恐れていては、成長もできないと言う強いメッセージと、その乗り越え方を教わりました。

【取材協力】
現職:IT関連業(スタートアップ) 執行役員
イニシャル:H様

《この記事に関するお問い合わせ》ラボラティック株式会社 広報担当

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