【取材記事vol.8】「込める」「叶える」「整える」

【取材記事vol.8】「込める」「叶える」「整える」

混乱期回復の鍵となる断捨離の真髄

今回は、旅行代理店で支店長から企業の取締役になるまでの藤野さんの経験を通して、マネジメントのエピソードを伺いました。藤野さんは組織の立ち上げや低迷した組織の立て直しの経験を、そのユニークな視点とユーモアを交えて、いくつか共有してくださいました。

自分と1名以外は全て新卒。【込める】ことを伝える形成期 藤野さんが支店長になった際の人員構成は、ベテラン社員4名と新卒メンバーでした。社会人経験の少ないメンバーを含むチーム構成で、既存の業務を継続しながら、まっさらなチームを育てていく必要があったそうです。 「新入社員だったからこそ、重要なことをしっかり伝えると、理解して行動に移してくれたことは本当にありがたかったです」 と今は振り返られていますが、その当時の藤野さんは悪戦苦闘だったそうです。 「お客様を迎える挨拶一つにしても、ちょっと指示をすればできる人もいれば、そもそも挨拶を大きな声ですること、声を張るような対応をしたことがない人もいました。その時に、その人それぞれの特徴があるから、まずは気をつけて接しないといけないと気づきました」 このような気づきから、藤野さんが取られた行動は、なぜ、この行動をしなくてはいけないのかという目的を伝えていくことでした。 「接客なので挨拶は必要です。しかし、ただ声を張り上げて大きな声で挨拶しなさいでは通じない。お客様を出迎えたときに感謝の気持ちを伝えるのが必要だから、いらっしゃいませとか、ありがとうございましたとかいう挨拶には、気持ちを込めて伝えよう。それを言い続けて、やっていきました」 藤野さんご自身は体育会系と自らおっしゃっていましたが、世代もタイプも違う方々に、いかに理解して実践してもらうかについては、試行錯誤されたそうです。 藤野さんの、まっさらからの新店舗立ち上げは、まさに様々な想いを「込める」ことから始まったのかもしれません。 いかにお客様に気持ちを込めるのか。 異なる世代の方にわかってもらえるよう、ご自身も、相手に意味や想いを込めて接することの積み重ねですね。

積み重ねた結果、藤野さん率いる新店舗は、関東圏でも上位5位以内に入るような急成長店舗になっていきます。 「私も少し調子に乗ってしまいましたね。本当に、何でもできる気持ちになってしまった時期がありました」 その結果、藤野さんは、周囲に新規店舗が多いため「末期の状態」と表現する、関東で集客力がワースト1位の店舗へ異動し、混乱期の立て直しへ。

【叶える】ことで切り抜ける混乱期 「私たちは、他の店舗だったら頑張れるんだ」 関東ワースト1位の店舗は大型で、35名程度のメンバーが在籍していたそうです。その日に終えるべき業務が終わっていなくても、18時になると社員がさっさと退社してしまう。外にチラシを配布しにいく担当者が、全く見当はずれな場所で配布を行い、チラシの消費だけはする。新支店長の藤野さんは、この状況で、メンバーに会社の方針などを伝えますが、当のメンバーは、自分たちの店舗にそんな話は該当しないと、どこ吹く風の様子でした。 すると、この冒頭の言葉「他の店舗なら頑張れる」が、メンバーからちらほらと聞こえてくるようになったと言います。 「支店の3分の2のメンバーが、自分は他の店舗だったら頑張れるんだ、とか訴えるんですよ」 もし、自分が店長だったら本当に辛い言葉ですが、藤野さんはそこで実際に該当者を他店に異動できるように段取りを行い、メンバーの願いを叶える形で対応を進めました。 「結果的に、会社がしっかり成長する方がいい。であれば、本人たちの願い通り、他の店舗へ異動して成果を出せれば良いと思いました」 支店としての成績も振るわず、メンバーの人数は多く、人件費が嵩み、支店の経費も限界な状況での決断でした。少し引いた視点で見れば、大混乱の時期に、互いの願いを叶えるという離れ技です。 人員異動の結果、残ったメンバーは12名ほど。人件費も経費も最低限で、 できることから店舗を盛り立てていくことを始めます。 「もう、これからは教えてくれる人もいない。ゼロから、この店舗をもう1回立ち上げていくことになる気持ちがあれば一緒にやろう」 残ったメンバーに、こう声がけされたそうです。もう少し規模も大きくしたいし、その時にはリーダークラスを担ってもらいたい旨も打診もしました。ワースト1位の支店の蘇生を試み、見事、同店舗は息を吹き返していきます。

ここで、混乱期の火消しのように、次から次へと、他の成績が振るわない店舗の立て直しを任されてきた藤野さんに、混乱期の立て直しに法則があるのかを伺ってみました。

立て直しは、【整える】から始める 「基本の基本なんですけれど…店舗を綺麗にしないとダメです」 実際に業績の振るわない店舗に出向いてみると、どんよりしていると表現されます。なぜか店舗全体が暗い。 そして、その店舗の状態に合わせるかのように、人も暗くなっていくのだそうです。 ある店舗では、店舗の新装開店から一度も電球を交換しておらず、薄暗さが目立ちました。 「電球を変えると経費が嵩みますが、それでも全て交換してもらいました。 すると、スタッフも驚くほど店舗が明るくなった。 お客さんも、あれ?なんか明るいですね、となる。 そうすると、成績がどんどん上がります。 もちろん、電球でなくてもいいです。掃除でも」 それだけではなく、明るいことで気がつくことも増えると言います。 明るいと、地面に置いてある段ボールなども目につきやすい。 綺麗にしていくと、お客様の反応も変わる。 集客も上がるし、スタッフは前向きになる。すると、 「みんながアイデアを出し始め、ゲーム感覚で成果を出せるようになりました」 少しずつみんなで工夫するサイクルが回ることで、良い循環が生まれたそうです。 いきなり、小手先の何かを仕掛けるのではなく、まずは環境を整えてから。組織運営の鉄則と言えそうです。

今回は、さまざまな店舗の立て直し、混乱期を乗り越えていらした、藤野さんのお話を伺いました。 混乱期の組織には、知らない間に、小さく日々累積している組織の詰まりも多そうですね。 このような、累積してしまった組織の詰まりの取り方について、改めて唸る視点を頂きました。

【取材協力】
H.I.F.株式会社 取締役業務執行役員
藤野 孝様
https://www.hifcorp.co.jp/

《この記事に関するお問い合わせ》ラボラティック株式会社 広報担当

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